投稿「ひよきちのムラサキ日記」
 ムラサキ。そうです、あの絶滅危惧種の植物であります。幻の野草でもあります。それでは参ります。 つぎはぎだらけの「ひよきちのムラサキ日記」。

 かねてより万葉関連でメールを交換させていただいていた方より「ムラサキの苗」を頂戴できることに!電話で色々と栽培方法について伺い、いざ実践に移してみたのだけれど移植した途端、ヘナヘナと元気がなくなってしまいそのまま苗は消えていってしまった・・・・・。・・・・その時のショック。落ち込む私を メールの友人は優しく慰めてくださいました。 どうやらその方も幾度と無く失敗を繰り返してこられたらしい。その励ましが何より嬉しかったです。ありがとう。
 
 万葉の森公園を散策しているとき、ムラサキの花壇の前でなんとムラサキの種を発見!
どうやらぽろぽろと落ちていたらしい。ど、どうする! ひよきち。数えてみると全部で6つ。その種をじっと見ていると種達が「あたちたちをおうちに連れて帰ってくだちゃい」と言っているようにも思える。・・・そうだよなあ・・・。あなたたちが落ちている場所と言ったら、ガチガチに踏み固められた硬い土の上だもんなあ。このままほっといたら あなたたちこのまま忘れられてもしかしたら発芽も出来ないかも知れない。それも不憫だよな・・・・。よ、よし! ひよおばちゃんが連れて帰ったる!そして、何とかして発芽させたる!そう決心したひよきちは彼女たちをハンカチにそっと包み、家へ連れ帰ったのでありました。

 持ち帰った種を見て 私は困ってしまった。めっちゃ固いのである。ほんまにこれは発芽するのだろうか。触ると、まるで陶器のようだ。 種と言えば「アサガオの種」ぐらいしか思い浮かばない私だったのでその6つの種をどう扱っていいか困惑してしまったのである。おまけに夫ともなると「種というものは本来黒いもののはずだからこの種に関してはまだ未成熟なのでは?」などと言い出す始末。仕方ない。とりあえず水につけてみよか。そう決めた私は 小鉢の中にぬれたティッシュを敷き、その上に種をおいた。植物というとどうしても「女性」という感じなので 小鉢の色はピンク。それも桜の形の可愛い小鉢をご用意させていただきました、はい。いつも目の届くところがいいかなと思い、机の上に置くことにした。机の上に置いたら置いたでどうも気になって仕方がない。ティッシュが乾いてないかなとか、水の量が多すぎるかなとか過保護と言われようが何と言われようが 気になるものは気になるのだ。一体何日間、水につけておけばよいのだろう・・・・。「何日水に浸かっていればいいのかな?」と訊いてみるが 当然のことながら彼女たちからの返答はない。ひよとしては時折彼女たちを見つめ 「頑張れ・・・」と呟くことしかできないのだ。・・・・彼女たちにしてみれば 小さな親切大きなお世話 と言ったところであろう。突然拾い上げられ、ふと気付けば女性がじっとこちらを見つめ、家に連れ帰られ いきなりピンクの小鉢の住人となってしまったのである。そして いつもその女性が「絶対に発芽させたるからな。安心しときよ。」と気合いを込めて話しかけてくるのである。

 種を水につけること5日間。夫からも「そろそろ ええんちゃうか?」と言われるようになってきた。うーん、やはりそうだろうか。そろそろ植え時かも知れないと思い、とりあえず 黒いビニール鉢の中に彼女たちを植えてみる。どのくらいの深さに植えたらいいのかも分からない。どれくらいの間隔をあけたらよいのかも 皆目見当もつかない。土は?買ってこなくていいのだろうか?ぐるりと庭を見渡すと そこかしこに真っ黒な土。ひよ家では毎週無農薬のお野菜を届けていただいており、その野菜の切れ端を この庭にずーっと埋め続けてきたのだ。どれどれその土を使ってみようと思い立ち、鉢の中にどんどん入れていく。わざわざ我が家においで頂いた彼女たちに最高のベッドをと思い、ちょっと気合いを入れて頑張った。無事植え終わり、鉢を庭の隅の方に置く。芽、出てくれるといいな。その頃になると朝晩の空気が冷たくなり、ちょっとした油断がもとで ひよきちは持病が出てしまった。情けないことに 1日中 床につく日が続くようになる。ムラサキのことが気になりながらも、どうしようもできない。床の中で どうか彼女たちが無事に育ってくれるようにと願った。・・・・こんな事を言っては笑われそうだが、私は 人と花とは心を通わせることが可能だとさえ思っている。よく 植物の種を蒔いて何日かしたあと、私は 小さな芽が土を払いのけようとしてうんうん唸っている夢を見る。そこで目を覚ましいつも慌てて植木鉢を見にいくのだ。すると、たいがい夢で見たように小さな芽が土に埋もれて苦しそうにしている。いや、実際苦しんではいないのだろうが、その姿を見ているとなんだか可哀相になり上の土を払って上げるのだ。人が花を一方的に育てるというのは何処か間違っているとすら思う。私たちだって花によって勇気づけられ、花によって育ててもらっているのだと思う。・・・・身体は本調子ではないけれど やはりムラサキのことが気になり、あたたかな格好をして庭先へ。しばらく庭に出ていないうちに、随分様変わりしていた。彼女たちの鉢を見てみると 生えているのは小さな雑草だけ。その雑草をひとつひとつ抜いているうちに・・・私はある一つの芽を見つけた。これは ムラサキの芽なのだろうか?誰かに問い合わせてみたい気にもなるけれど、その問いに答えてくれる人はいそうにない。私はその植木鉢の中の芽をじっと見つめる。・・・単なる雑草ではなさそうだ。その証拠に 茎の部分が太く、しゃんとしている。何処となく・・・(言ってもいいのだろうか。この芽を前にすると 自分の考えている事全て見抜かれているような気がするのだが。彼女たち、気を悪くしないだろうか。)・・・あの「貝割れ大根」に似ているような気がするのだ。よくよく観察してみると、双葉は深い緑。茎は真っ白。・・・・やはり雑草ではないのかも知れない。確かめる方法はただひとつ!あろう事か 私は2つ出ている芽のうちのひとつを引っこ抜いてしまったのである。そう、おそれ多くも あの「ムラサキ」の芽であられるかもしれないものをである。なんという大胆さ!そしてその思慮の無さ!もっと言えば根っこのどこかに種がくっついているはずだと考えるその「おとなげ」の無さ!どことなく幼い子どものような気もするがその幼子のような探求心(笑)こそが大事なのだと自らに言い聞かせ、引っこ抜いた根をじっと見つめる。すると・・・・あった・・・・・。根っこのところに ムラサキの白い種の殻がくっついていたのだ。それまで ムラサキの種は発芽率がかなり低く、栽培も困難だと聞いていたので自分の手の中にあるその小さな苗を見ても 俄には信じられなかった。・・・・・ただただ 種の持つ そのつよい生命力に感嘆した。