万葉の花とみどり_紫草(むらさき)の栽培の実際
NPO法人「仙覚万葉の会」紫草栽培協力専用ページ

紫草(むらさき)の栽培
紫草の栽培は、至難と言わざるを得ない。資料はあるにはあるが、諸説あって、これがベストと断言できるようなものはないように思われる。これまでの栽培活動から、おそらくこうする方が比較的良いであろうということくらいしか、述べることはできないというのが実情である。とにかく、確固たる情報や記録がないのである。ここでは、少しでも参考にしてもらうべく、栽培上の工夫や注意点を画像と共に掲載することにした。
【左】ムラサキの種:青白い光沢を持ち陶器のような雰囲気。表面は硬く、こぼれ種で秋に発芽のケースがうまくいく。
表面に傷をつけて水でふやかし方法もあるが種が小さいので結構な作業となる。
じかに植える場合はトーチバーナー等で焼いて消毒すると安心であり、肥料は不要の野草と考えて問題ない。
種皮が硬いせいか、数年して発芽するケースもあるので、土はとっておくと良い。
【右】自然状態からの発芽:こぼれ種の発芽率は著しく低く、このあとほとんどが枯死してしまう。
朝の気温が10℃を超える日が数日続くと発芽すると言われるが、好条件はなかなかつかめない。



【左】霜か降りなくなってから(あるいは屋内)まめに水やりする。土質は水はけが良いことが必須で、
完全に発酵済みの土か鹿沼土の割合を高めたものが良いが、これは紫根を採る際の泥落としの手間を省く意味もある。
【右】本葉が2枚出たところ:この時期が乾燥枯死やナメクジの食害に逢いやすいので最新の注意が必要。



【左】本葉4枚に:移植するならこの位が良い。これ以上伸びてくると逆に根を傷める可能性が出てくる。
【右】2年目の発芽:2年以降は双葉ではなく本葉が束になって伸びてくる。



【左】早くもつぼみ:4月の末にはつぼみを持つ株も出てくる。GWのあとに開花するものもあるが、
個体差の大きい植物なのだろう。
【右】純国産種の特徴:葉の幅が太く葉脈の溝が深い、葉幅はときに3p以上のものもあり、
葉脈の溝はかなり深く、遠目でもはっきりと刻み込まれているのがわかる。また、表面に剛毛があり、
葉の色は深い緑色で手で触れるとかなりざらざらしているのがわかる。



【左】10下旬蒔き、鉢で発芽させたもの。寒さにはかなり強いと聞くが、ある程度は育ててからでないと
霜で枯死する。移植はできるだけ避けたいが、どうしてもという場合は発芽間もなく根の張りが
不十分なころの方がかえって良い。ある程度成長してから根を傷つける方がダメージが大きい。
【右】ムラサキが乾燥を好むといっても、それは根が十分に張ってからのこと。排水のよい土を
用いるのなら、毎日水は必要である。また、部屋の中で「温存」させても良いが、灌水を怠らないこと。


「栽培上の注意」

 どこかに自生種があるとしても、左上画像のように木陰でひっそり咲いているのだろう。庭での栽培は、気温の低い午前中なら日当たりの良いところで問題はないが、強い西日が当たる場所は高温になりやすいため避ける。また、石灰岩質に自生地が集中していることからご親切にも石灰をまいてしまう愛好家もいるようだ。しかし、石灰岩質を好んで自生というより、そのような厳しい環境では他の競合する植物が少ないからという考えの方を支持したい。ムラサキには必ずしも石灰が必要ということにはならないのだと思う。むしろ、過度の石灰は土質を硬くしてしまい、根の呼吸が妨げられ、かえって病気になりやすくなるのではないか。
 ムラサキはいわゆる「弱い植物」の代表である。特に、花の付く頂部にはウィルスを媒介するアブラムシが集まりやすく、各種の病気にも注意したい。また、ナメクジやダンゴムシがいるとたちまち画像のように虫食い姿になってしまう。葉を食われると体力が落ちて枯死するケースも多いので、素早い対応が必要である。異変を発見したら直ちに対応し、被害が深刻な場合は取り去り、焼却か廃棄するのがベター。しかし、かなり取り去っても、わき芽がつぎつぎと出てくるので、悲観することはない。次第に虫の勢いが弱まるし、秋まで花は楽しむことができる。また、どうせ種は取らないのなら、宿根で翌年に期待するという考えもある。害虫や病気は、土質や日当たりよりも重要なポイントだ。よくあるケースでの対応をあげてみた。
  1. 花が小さい→良好な環境であれば一年目でも花径6-8ミリ程度の花をつけ、地味でありながらもかなり遠方からも目立つはずである。(右画像10円玉の10の文字はよこ×たて=6×8mmなので比較に便利)小さい花しか咲かないケースは、多くは極度な乾燥や鉢植えで根が詰まってしまうことにより、生育状況が悪い証拠。当面は芽を摘み、わき芽を伸ばしておき、秋口に気温が落ち着いてきたところで移植する。
  2. アリの巣や軽い症状の葉の異変→木酢液の散布。効果が持続しないのでとにかく回数を重ねる。
  3. ナメクジやダンゴムシ→木酢液は全く効かない。残留性のない天然有機忌避剤を使用。株の周りにプレートを置き、その上に薬剤をまくようにすれば、土壌を汚染しなくてもすむ。
  4. アブラムシには、木酢液の他、アセビの抽出液や牛乳が良い。被害があまりにもひどい場合は、オルトラン希釈液の使用も仕方がないが、効果を確認しつつ最小限の使用にとどめたい。
  5. 他の植物との混植が効果あり。マリーゴールドやニラ、ニンニク、ネギ、ハーブ類は効果があるようだ。混植による天然の忌避効果もそうだが、単に湿度の安定も大きな要素と考えられる。

「プランター栽培」「採種」
【左】大きな鉢かプランターを推奨:庭植はベストではない。というのは、近くに根張りの強い植物があるとかえって成長が阻害される。むしろ、邪魔の入らない大きめのプランターの方がよい。画像は、発芽から成長が思わしくなく処分寸前だった数株をプランターに移植したもの。梅雨ころからいきなり伸び始め、花や茎も立派に成長した。極度の乾燥や病気を避けるという意味でも大きめのプランターを推奨したい。
【右】種は熟するに従い、灰色から陶白色に変わる。手で触れるとぽろっと落ちる。多数の種ができるが、発芽率はかなり低い。ある資料では発芽率20%程度とあるが、とても信じることはできない。蒔く時期か気温の当てがはずれれば数%、生育となると「それ以下」ではないだろうか。また、開花受粉による雑種化を避けるため、できる限りタネは採取しない方が良い。もし増やす場合は「挿し木」で行うことをすすめたい。挿し木の時期は梅雨のはじめか、9月の長雨以降、晩秋から屋内で越冬の3つの方法がある。

「純国産種の危機」  ※西洋ムラサキとの混植厳禁
 西洋種との雑種化に注意!:国産種と思いこんで栽培している愛好者がかなりいるようだが、もともと「万葉の花」ではない。国産のムラサキと混植すると雑種化してしまうので、これは絶対に避けなければならない!もっとも、種を取らず挿し木増殖を徹底すれば問題はないが・・・。生育はとても旺盛で、5月初旬に小さく黄緑色がかった白い花を咲かせる。花びらは卵形で重なりが少なく、薄い葉色の葉間が狭く分岐が多いのも特徴。紫根は単位重量あたりやや少なめだが、根が丈夫なこともあって、総量では十分な染料が採れると言われる。


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ムラサキ草データベース
「参 考」
・万葉植物事典(山田卓三 中嶋信太郎:北隆館)
・ムラサキの観察と栽培(大滝末男 ニューサイエンス社)
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