万葉の花とみどり
 つつじ  茵 管仕  ツツジ

 …竜田道の丘辺の道に丹つつじの
      にほはむ時の桜花 咲きなむ時に…
                高橋虫麻呂 巻六 971

『読み』…たつたぢのおかへのみちのにつつじの にほほむときのさくらばな さきなむときに…(長歌)
『歌意』竜田道に沿う丘の上に丹色のつつじが微笑みかけるように咲いている。ちょうど桜の花も咲こうとしているこの時期に…


低木の明るい山林でよく見かける


桜と並ぶ代表花
 赤いツツジが匂う頃のサクラの咲く頃というというように、代表花であるサクラと並べて詠まれています。壮麗で樹高の高いサクラに比したものか、それとも目を楽しませてくれる花ととして並べて詠んだものでしょうか?時代を下るほどサクラのような派手な花樹がもてはやされるようになっていくのですが、万葉時代にはまだわりと、ツツジのようにこじんまりしたシンプルなものが好かれていたのかも知れません。歌は藤原宇合が、九州に出発する際に詠まれたもので、竜田「道」の丘の「道」というように、ツツジロードに丹色の花がたくさん並んでいる様子が強調されています。

種類多く初夏最も目にする代表花
 常緑性のツツジは、樹木の丈や管理のしやすさから、現在においても街路や家の外回りに好んで植えられる代表的な植物です。今では、数多くの種類が存在しますが、歌に詠まれたのは主に野生のヤマツツジではないかと考えられています。しかし、ヤマツツジの基本色は朱色〜赤系なのに、万葉集において「赤系」花が詠まれたのは、冒頭に「丹つつじ」として詠まれたただ一首のみというのは少し寂しい感じがします。次の歌は、白花種を詠んだものですが、白つつじとは、ドウダンツツジではないかという説もあるようです。ちなみに、ここでも「にほはね」の表現が使われています。
 たくひれの鷺坂山の白つつじ 我ににほはね妹に示さむ
                 作者不詳 巻九 1694
 
近似種にサツキ
 ツツジに近い種で、花が大きく品種も多様なことで知られるサツキがあり、これは万葉集で「岩つつじ」として詠まれているものです。もともと、サツキツツジと呼ばれていたものが省略され、単にサツキ類となったものです。サツキは、石の多い傾斜地に生え、横に広がるように伸びていくので「岩ツツジ」として歌の題材となったのでしょう。樹高低く花付きがいいので、盆栽に向いており、愛好者も多いようです。
 水伝ふ磯の浦みの岩つつじ もく咲く道をまたも見むかも
                日並皇子宮舎人 巻二 185




管理者『妬持』の声
 そう言えばウチのオヤジも「サツキ会」なる愛好者のグループに属していました。自分が子供の頃なので、相当若くして盆栽に目覚めたタチだということでしょう。庭はもちろん、縁側、部屋の端にもサツキ盆栽がひしめいていました。盆栽の前に座って、なぜか熱中したのは、おしべとめしべをくっつけるお遊びでした。オヤジの影響で、サツキ花とのつき合いは長いはずなのに、その不肖息子は、今だにツツジ花との区別に難儀しています。


TOPページ→