万葉の花とみどり
う め   梅 鳥梅 ウメ
 妹が家に咲きたる花の梅の花 
実にしなりなばかもかくもせむ 
藤原八束 巻三 399 
『読み』いもがやにさきたるはなのうめのはな みにしなりなばかもかくもせむ
『歌意』あの娘の家の庭に咲いている梅の花であるが、実がなったらどうしてでも自分のものにしたいものだ。
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春の到来を象徴する梅:香る花として万葉集における扱いは格別だ:
そこかしこに梅香る2月 大梅寺を背景に
香る花
 
梅は、中国原産とされるバラ科植物。豊富な品種を擁するポピュラーな種であり、開花の季節になると名所と言われるところは、香りを求める人でたいへんなぎわいである。古来より、ほのかな香りとともに他の花に先駆けて咲く梅は、春の到来の象徴として多くの人々に親しまれてきた。もちろん万葉集での扱いも格別で、梅が詠み込まれた歌は、第一位のハギ(142首)に次いで(119首)いる。
 梅は、古事記や日本書紀には全く登場せず、万葉集でも8世紀に入ってからの歌になるので、7世紀の後半に大陸に渡った遣隋使や遣唐使、僧侶が苗を持ち帰り、その後急に普及したものと思われる。万葉歌人はこの初春に香る花に異常なまでの関心を示し、特に大陸の影響を受けた貴族達は、梅を詠み込んだ歌を多く残している。後述の歌も、天平二年正月に太宰府の大伴旅人邸での宴の際に詠まれたものである。先進的で大陸文化に通じた大伴一族は、格好の歌の題材となる梅をいち早く自からの庭園に植栽したのだろう。
春の野に霧立ち渡り降る雪と 人の見るまで梅の花散る
 筑前目田氏真上 巻五 839 
 また、春、梅、太宰府と言えば、万葉からは少し時代が下るが、かの道真が太宰府に左遷され都を思いつつ詠んだ歌が想起される。『東風吹かばにほい起こせよ梅の花 あるじなしとて春を忘なそ』はあまりにも有名。
紅梅が青空に映える 近寄るとさらに良い香が
梅林に入ってみる 見上げると思わずトリップしそう
梅うぐひす
 鳥梅(うめ)の字ですが、梅と言えば鶯。梅の花のつぼみがほころびはじめると、どこからともなく聞こえてくるのが「ホーホケキョ」。我々には、春を告げる鳥の声と言えばウグイスというように刷り込まれているようで、万葉歌でも、梅とウグイスがセットになっているものが実に30首近くも詠み込まれている。ちなみに、うぐひすの「う」は「生える」、「ぐひ」は「食い」、「す」は「巣」で、「草むらに巣くう鳥」の意だとか。
 次の歌もやはり、旅人邸での宴の際に詠まれたもの。
春去れば木末隠りてうぐひすそ 鳴きて去ぬなる梅が下枝に
 小典山氏若麻呂 巻五 827
『管理者の声』
 春の到来を告げる花と書きましたが、実際はまだまだそら寒い中にぽつぽつ咲き始める感じです。しかし、新緑をまだ見ぬ時期に梅の香りがしてくると、長い冬がほんとにあと少しで終わるのだなと感じられるわけです。私は、梅の開花時期を暖冬、厳冬いずれかであったかのバローメータにしています。

 大伴妬持